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エムガルティと片頭痛
2022.04.10こんばんは。院長Kです。先日は頭痛講演会にて座長をさせて頂きました。演者の先生は頭痛学会では知らない人はいないくらい有名な、京都の立岡神経クリニックの院長でいらっしゃる立岡良久先生です。東京と京都を中継でつなぐ、まさにコロナ禍でのWeb講演会スタイルです。
頭痛診療41年の大ベテランの先生!
今回の講演会のテーマは「頭痛トンネルからの脱却を目指して」でした。
なぜ頭痛トンネルからの脱却か?
片頭痛の治療には長い間新薬が出ずに、片頭痛に苦しむ数十年の歴史があるのです。その長いトンネルに光が見えたのが去年の4月26日。エムガルティの発売でした。
そして、この一年、片頭痛治療のパラダイムシフト、つまりは片頭痛の治療が大きく変わり、飛躍した年でした。その皮切りが、講演会の主催者である日本イーライリリー株式会社と第一三共株式会社がプロモーションするエムガルティという抗CGRP製剤であり、片頭痛治療にて唯一予防効果の有効性が示されている注射薬剤です。
片頭痛は歴史的に現在は第3世代と言えます。第1世代はエルゴタミン時代、第2世代のトリプタン世代、そして第3世代が現在の抗CGRP製剤時代です。
第二世代は20年前に遡ります。片頭痛の特効薬でえるトリプタン製剤、今でいうイミグラン、マックサルトなどですね。これらの薬剤の登場により片頭痛という病気は消退すると思われていました。しかし、蓋を開けると片頭痛の患者さんは増えており、今なを片頭痛に苦しむ方が沢山おります。その中にはMOH(Medication Overdose Headache)と言った薬物乱用性頭痛の患者様が沢山います。医療業界が作ってしまった現象とも考えられ、一医療人として反省しなければならない事です。今はトリプタンなどは頓服10回までしか処方出せませんが、以前は2錠分2朝夕食後60日分などと、処方されていた時代も有りました。頭痛に悩む患者さんは苦しいので内服を沢山します。それにより薬物乱用性頭痛に陥り、さらに頭痛を誘発させるという悪循環に陥ります。
何度かこのブログでも発信してきましたが、片頭痛の予防は、ある一定の回数以上ある患者さんには必須です。そして、その予防にようやく光が差し込んだのがエムガルティをはじめとする抗CGRP製剤です。現在はアジョビ、アイモビークと併せて3種より選択できる時代となってます。
その皮切りとなったエムガルティが今年で1年目を迎えます。
当院でも多くの患者さんが使用しており、極めて良好な結果を出してます。頭痛が無い世界を体感したかの様な感想を言ってくる患者さんもおられます。
是非、片頭痛に苦しむ患者さん全員に使いたいのですが、難点が2つ。月一受診と薬価が高額(自己負担13000円程度)。片頭痛の患者さんの多くは20-30歳代の若い人。忙しくて月一の受診が困難、経済的にも余裕があるわけでは無いと、1番使いたい患者さんに1番使いにくい設定なのが難点なのです。早いところこの辺の解決をしてもらいたいと、頭痛専門外来医は願っている事でしょう。
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