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薬物乱用性頭痛
2023.04.02こんにちは。院長のkです。桜の花もだいぶと散りさり、春の風物詩も第4コーナーとなりました。
ですが、徒然草にはこうあります。
花は盛りに、月はくまなきをのみ見るものかは。
直訳すると、花は満開の時に月は雲がない時に見るのが1番良いのか?いいえそうではない。と言う意味です。花が散った今となっても、それはそれで今の素晴らしさがあると言うことです。残った春を楽しみたいですね。
そんな春ですが、春になると頭痛が増えます。花粉症、セロトニンの放出、出会いと別れの新しい環境などなど。
今日は、少し変わった頭痛のお話しです。
痛みの中でも頭や首が痛い時、頭痛という不愉快な症状を訴えます。お腹が痛ければ腹痛を訴えます。痛みというのは他人には分からず、また客観的に測定する手段も有りません。
しかし、痛みというのは本来原因が明確にあり、その原因が解明されていてその痛みに応じた治療ができる事ができるのです。
そんな中、痛みの原因が無いにも関わらず痛みを感じてしまう事が有り、今まではよく分からない痛みとして宙ぶらりんな位置にあった痛みがあります。
痛覚変調性疼痛。
皆さん聞いた事があるでしょうか?
体の損傷などの明らかな原因がなくても痛みが長引く場合があり、脳の神経回路の変化が影響していることが最近の研究でわかってきました。国際疼痛(とうつう)学会が「第3の痛みのしくみ」として提唱。日本疼痛学会など痛み専門の国内8学会の連合が2021年、痛覚変調性疼痛と呼ぶことを決めました。
痛みの発生は従来2つのタイプで説明されてきました。
①けがや炎症で組織が傷つき、痛みの信号が出て起きる「侵害受容性疼痛」。ぶつけた所が痛いからロキソニン飲むがこれです。
②手術や事故、脳卒中などで神経が損傷して起きる「神経障害性疼痛」です。脳梗塞後に半身の痛みと痺れが残り、例えばリリカ(プレガバリン)飲むがこちらになります。
しかし、
③どちらにも当てはまらない痛みに苦しむ人は多く、痛む部位を調べても原因となるような異常は見つかりません。すなわち痛みをひきおこす体性感覚系の疾患や傷害の証拠がないにもかかわらず生じる痛みなのです。
線維筋痛症などがその代表的な疼痛分類されるものでありますが、しばしば頭痛外来にて出くわす薬物乱用頭痛(medication overdose headache:MOH)もこのカテゴリーに入るのではないかと思います。
頭痛が1ヶ月に15日以上有する場合、「慢性の片頭痛」「慢性の緊張型頭痛」「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」の3つの可能性が考えられます。
薬物乱用頭痛の診断に当たっては、「市販の鎮痛薬を1カ月に15日以上(薬にカフェインが含まれている場合は10日以上)飲んでいないかどうか」をチェックします。もしこれに当てはまれば、それは薬によって起きていると言えます。
「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」とは、アセトアミノフェンや非ステロイド性消炎鎮痛剤などの鎮痛薬、トリプタン、複合鎮痛薬(鎮痛薬とカフェインの合剤など)などの薬を常用することで起きてくる頭痛です。
頭痛持ちの人は、またいつ頭痛発作が起きるかわからないという不安があるため、痛いときはもちろんのこと、頭が痛くなくても予防的に薬を飲んでしまいがちです。「今日は大事なミーティングがあるから、前もって薬を飲んでおこう」とか、「今日は友だちと遊びに行くので、頭が痛くなったら困るから薬を飲んでおこう」などというように薬への依存がエスカレートしていく傾向があります。そうする事で薬の量が増え、効き目が持続する時間も短くなり、しだいに痛みの水面下で脳の過敏状態が増大し毎日のごとく痛みを敏感に感じとってしまいます。これが「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」です。
医学的な定義は、
①以前から頭痛疾患をもつ患者さんにおいて、頭痛は 1ヵ月に15日以上存在。
② 1種類以上の急性期または対症的頭痛治療薬を 3ヵ月を超えて定期的に内服している。
となります。
薬物乱用頭痛を乗り越えるのは20%程度とも言われており、非常に困難な病態なのです。
片頭痛においては抗CGRP注射製剤(エムガルティ、アジョビ)や抗CGRP受容体抗体(アイモビーク)などが登場し、以前よりは薬物乱用頭痛を抜け出す手段も出てきました。
大切なのは、その前に(薬物乱用頭痛になる前に)対処する事です。その為の頭痛外来だと思ってます。
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