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頭痛外来で出会う解離痛
2021.04.03こんばんは。院長のkです。先日「あなどれない第2の頭痛」について書きました。椎骨動脈解離(ついこつどうみゃくかいり)という血管の解離、血管壁の剥がれによる障害です。本日の頭痛外来でもこの「解離痛」による頭痛で受診した患者さんがいらっしゃいました。咳をした時に激しい後頭部痛が発生したのです。
日本人はこの椎骨動脈に解離を起こす事が1番多く、私の経験した解離も殆どが椎骨動脈です。椎骨動脈は首の骨の中を走って頭蓋内へ入るため、首の過度な動かしやカイロプラクティックなどの首の強めのマッマサージなどで発症するケースが多いのです。
さて、爆笑問題の田中さんが脳動脈血管解離は皆さんもご存知のことと思います。彼の解離血管は椎骨動脈ではなく、前大脳動脈の解離の様です。前大脳動脈の解離は比較的珍しいですが、頭痛外来をやっていますと時に出くわします。
前大脳動脈は基本的には左右一本ずつあり、目と目の間の奥の方からおでこの方にかけて走り、更に脳のど真ん中のてっぺんへと流れる血管です。
そのため、強い目の奥の痛みからおでこ、つまり前方の痛みが強く現れます。椎骨動脈と同様、くも膜下出血や脳梗塞のリスクになります。幸運にも頭痛だけで解離が止まる場合には2、3ヶ月で自然治癒していきます。
解離とは、血管が剥がれるのですが、そもそも血管壁は大きく内膜、中膜、外膜の3層構造で形成されます(正確には内弾性板などが有りますが、ここではわかりやすくするため割愛)。内膜は血液が触れる側です。これらの3層の膜が隙間なくくっついていますが、何らかの機序で(内膜に亀裂が入ったり)これらの膜の間に血液が流れ込んでしまい、これを偽腔と言いますが、そこが広がり膨れてしまいます。その時の痛みが「解離痛」です。そして膨れた先には血管が細くなり血流が減少してしまいます。膨れすぎて出血がくも膜下出血、先の細くなりすぎて血流ストップが脳梗塞です。その中間が頭痛のみです。
解離により少しだけ脳梗塞が発生し、そこに血が滲んでしまった。つまりは「出血性梗塞」と呼ばれる病態もあります。私の患者さんでも数人おりました。今もフォローで外来に来られてます。
以下に、以前別の病院で経験した症例です。黄色矢印の部分が血管の解離部分。赤矢印が脳梗塞と出血が合わさった部分です。MRIを撮影しないと解離は分からないのです。
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