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頭部外傷
2021.04.29こんばんは。院長のKです。
本日のニュースで相撲力士の響龍(ひびきりゅう)さんが亡くなりました。直接死因は急性呼吸不全となっておりますが、3月の春場所の取組で頭から落下し頭部外傷による意識障害と麻痺で闘病生活を行っており、リハビリテーションもしていたそうです。今回は頭部外傷のお話しです。
頭部外傷というと頭を打った場合を想像されると思いますが、必ずしもそうではなく頭が大きく振られた場合も含まれます。例えば交通事故で右の頭を打ったとしても、その時に回転加速度が加わり左側の硬膜下血腫が起こる場合もあります。あと、「揺さぶられっ子」としての小児虐待など大人が赤ちゃんを揺さぶりすぎることで脳の血管が破綻し頭蓋内血腫が生じます。頭の表面から脳に向かって「頭皮膚挫創(切り傷)」→「皮下血腫」→「頭蓋骨骨折」→「硬膜外血腫」→「硬膜下血腫」→「外傷性くも膜下出血」→「脳挫傷」となります。
意識障害を伴う重症頭部外傷は上記赤字の4パターンであり、頭部CTやMRIにて診断が容易につきます。この画像に出るパターンは単独ではなく複数の所見を伴うことがしばしばあります。
硬膜外血腫は脳を包む硬膜という硬い膜の外側(脳と逆の方)なので、脳を硬膜越しに圧迫するため意識清明期という少しだけ意識がはっきりしている時間があり次第に意識が低下していきます。脳を押しているだけなので、速やかに血腫を手術にて取り除ければ完全復活できます。
一方、硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、脳挫傷は脳細胞そのものに出血を起こし、傷がつくため、神経後遺症や高次脳機能障害、外傷後のてんかんなど後遺症を残すことが多いです。
その他、重症頭部外傷として画像上異常はないが意識障害だけが遷延する「び慢性軸索損傷」というものがあります。
頭皮の挫創がいわゆる切り傷で皮膚を寄せる縫合処置が必要な状態で軽症頭部外傷に入ります。軽症頭部外傷では「脳震盪」など一過性のものも含まれますが、ラグビーやアメフト、柔道など体当たりや頭部打撃を伴うスポーツの復帰時期に影響します。
小児は軽症頭部外傷でも嘔吐することが多く、心配して脳神経外科へ来院されるケースも珍しくありません。子供の場合の嘔吐は大人ほど深刻でないことが多いですが、嘔吐を伴う時には必ず1度は受診して下さい。
高齢者に特徴的な外傷で「慢性硬膜下血腫」があります。外傷時には画像上全く問題なくても、1-3ヶ月後にじわじわと血液が溜まってきます。頑固な頭痛、手足の麻痺で気付きます。時期を逸すると意識も悪くなるため、特に高齢者の頭部外傷は注意が必要です。
今までの脳外科人生で一つだけ確信を持てるのは、私も幼少期に祖母から言われた「頭の皮膚が切れて外に血が出ていたら、頭の中は大丈夫」というのは都市伝説です😀
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