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  • 頭部外傷と硬膜下血腫(手術画像あり:少し閲覧注意)

    2022.10.30

    こんにちは。院長のKです。本日は最近の寒さと比べて天気もよく暖かくて気持ち良い日曜日です。

    さて、元ドリフターズのメンバーであった仲本工事さんの訃報から10日ほど経ちました。死因は頭部外傷による急性硬膜下血腫とのことでした。

    頭部外傷は元気な人でも不慮の事故にて起こりうるアクシデントですが、幸いにも打撲だけで済む患者さんと、不幸にしてお亡くなりになる患者さんがおります。その両極端の病態の間には、頭がボーッとして嘔吐を繰り返す「脳震盪」や外傷をきっかけに痙攣を生じる「外傷性てんかん」 、考える能力が落ちてしまう「高次脳機能障害」があります。また、死の直前の状態で意識が昏睡状態を「植物状態」と言います。

    頭部打撲と脳震盪は頭部CTあるいはMRIなどの画像検査にて外傷に起因する異常所見は認めません。

    一方で、外傷性てんかん や高次脳機能障害、植物状態から死に至るまでの患者さんは、重症頭部外傷とも言われ、画像上に外傷に起因する特徴的な所見を認めます。

    外傷に起因する画像上の異常所見は、「頭蓋骨骨折」「急性硬膜下血腫」「急性硬膜外血腫」「脳挫傷」「外傷性くも膜下出血」「びまん性軸索損傷」があります。

    今回、仲本工事さんが負った「急性硬膜下血腫」はしばしば「脳挫傷」と「外傷性くも膜下出血」を伴っており、救済するためには1分1秒を争う時間との勝負、またイニシャルダメージ(最初のダメージの範囲)によっても予後が異なります。

    頭部を構成するのは表面から、髪の毛→頭皮膚→頭蓋骨→硬膜→くも膜→軟膜→脳となります。くも膜・軟膜・脳細胞はぴったりとくっついているため、髪の毛→頭皮→頭蓋骨→硬膜→(くも膜・軟膜・脳細胞)と言えます。硬膜は脳を守る硬い膜であり、急性硬膜下血はその膜と「くも膜・軟膜・脳」の間に出血し、その出血が塊となって脳を圧迫します。なぜ脳が圧迫されるか?それは、頭蓋骨が硬いために柔らかい脳の方へ圧力がかかるからです。

    脳の圧迫が強くなると脳の真ん中にある脳幹への圧迫が強くなり、脳の機能が低下します。脳幹は呼吸や心臓を動かす機能を持っており、その障害により死への道へと繋がるのです。また、大脳半球からの刺激が入って来なくなり、意識も無くなってしまいます。

    硬膜下に出血する原因は、外傷により硬膜への栄養血管が破綻する、脳の表面が損傷し出血する、太い静脈が破綻する事によります。

    頭部外傷後に意識不明の重体というと、たいていの場合急性硬膜下血腫やそれと共に生じる脳挫傷とくも膜下出血の合併による事が多いのです。

    緊急手術を要します。出血点を止める、血腫を取り除く、頭蓋骨を外して圧力を外に逃す事が必要となります。

    次回は、「急性⇔慢性」と同じ硬膜下血腫でも急性ではなく、1−2ヶ月後にジワジワ血腫がたまり、認知症や麻痺、頭痛の原因となる慢性硬膜下血腫についてお話しましょう。

     

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